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<Gift>
少年海琉君のココロは、その日、突如として奪われた。
今まで誰にも奪われた事のなかったココロを奪ったのは、入園式でうさぎ組に入ってきた、ひとつ年少の零ちゃんだ。
一目でココロを奪われた海琉君は、ぞう組のみんなに宣言した。
「いいか、うさぎ組の零ちゃんは、今日からオレのオンナだ!
手ぇ出したら、ぶっ飛ばすぞ!!」
およそ4歳児の発言とは思えなかったが、海琉君はドール幼稚園の総長だったので、誰も文句は言わなかった。
だがしかし、零ちゃんはうさぎ組に入ってきた同い年の子供達にも当然モテモテだったので、総長である海琉君はじきじきにミセシメを行わなければならない事が多々あった。
文字通りぶっ飛ばしてやると、セピア色の瞳を潤ませて、零ちゃんはしくしくと泣き始めた。
「海琉君、そんな事したら痛いんだよ……。
僕、そんなのやだ……」
しくしく泣きながらも一生懸命自分に話してくる零ちゃんは、ぶっとばされた子供もぼうっとする位に可愛くて仕方なかった。
当然、目の前でそれを見ている海琉君もぼうっと見つめてしまう。
そして無意識に「もうしない」なんて口走ってしまうのだが、当然そんな無意識の戯言は、翌日には反故にされていた。
海琉君が零ちゃんをオンナにして、一年後。
海琉君にシジョウサイダイのテキが現れた。
それは今年入園してきたきりん組の咲妃ちゃんだ。
零ちゃんと兄弟だとかで、しょっちゅう一緒にいるのだ。
「…零ちゃんは、オレのオンナなんだぞ……」
ぎりぎりと歯軋りをしながら、何とか咲妃ちゃんを排除しようと企む5歳の海琉君は、来年には自分がドール幼稚園を卒業するという事実に、未だ気がついていないようだった……。
ある日、海琉君は咲妃ちゃんにサイゴツウチョウを突きつけた。
「おまえ、いい加減零ちゃんの傍から離れろよ!
零ちゃんはオレのオンナなんだぞ!!」
咲妃ちゃんが入園してからというもの、零ちゃんは咲妃ちゃんといつも一緒にいて、海琉君のオンナなのに海琉君の傍になかなかいてくれなくなったのだ。
今までは組単位のお遊戯やお弁当の時間以外、幼稚園で常に一緒にいた仲だったというのに……。
海琉君の鋼色の瞳がぎらりと、きりん組の咲妃ちゃんをにらみつけた。
これまで海琉君のにらみに怯えないヤツなんかいなかったのだ。
これでコイツも零ちゃんから離れるに違いない、と海琉君は勝利への確信を得た。
だがしかし、海琉君にも誤算があった。
それは咲妃ちゃんがもの凄いぶらこんだった事だ。
「あんたこそ、お兄ちゃんに近づくのいい加減にしなさいよ!
お兄ちゃんはねぇ、咲妃のお兄ちゃんなんだから!!
大きくなったら咲妃は、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだから!!!」
海琉君は、驚いた。
怯えないどころか、咲妃ちゃんは零ちゃんを自分のモノだと海琉君に逆に宣言してきたのだ。
それにそれに、大きくなったらお嫁さんにするだなんて……。
海琉君の元々短い気はぶっちりとキレまくった。
咲妃ちゃんはきりん組さんの女の子だというのに、ぞう組やうさぎ組にいる零ちゃんにちょっかいをかけてくる男の子達同様にぶっとばしてしまったのだ!!
当然、その直後に咲妃ちゃんの大きな泣き声が辺り一面に響いた。
そしてその声ですぐ駆けつけてきたのは、二人が争っている相手である零ちゃんだった。
「咲妃、どうしたの?」
大きな声で泣いていた咲妃ちゃんは、零ちゃんに駆け寄るとぎゅうっと抱きついた。
「うえええええん。ひぃっく。え、えええええん。」
自分の腕の中で泣いている最愛の妹の姿に、普段は穏やかで大人しいと噂の零ちゃんも怒ってしまった。
「咲妃を泣かせるなんて、もう海琉君なんかだいっきらい!
もう一緒に遊ばないし、口だってきかないんだから!!」
零ちゃんはそう宣言すると、咲妃ちゃんを連れてお部屋へ戻っていった。
海琉君はというと、大好きな零ちゃんに「だいっきらい」宣言をされたショックがあまりに大きくて、その場に呆然とするしかなす術がなかった。
園庭の裏側で行われた零ちゃんをかけた争いの第一ラウンドは、咲妃ちゃんが勝者になったようである。
さて、そんな2人の争いを、窓からこっそりと覗いていた影があった。
それは園長の東山である。
「さて、零ちゃんを手に入れるのはどちらになりますかねぇ。
私としてはこのままどちらのものにもならずにいてもらって、16歳になったら私のお嫁さんになってもらうのもいいんですけど……。
ああ、そうだ。
今日の三人の様子を、理事長のMariaさんにお伝えしておかなければ──」
東山園長はそうおもしろそうに呟くと、どこかへ電話をかける為に受話器を取った。
To Be Continued...?
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